立体地図と立体地形模型
立体地図に近い物としては、立体地形模型があります。
博物館や観光案内所などで大きな山の模型を見たことはありませんか?
地名などの書かれたスイッチを押すと、現在位置や目印となるランドマーク
の場所のランプが点滅するような地形模型をごらんになったことがあるでしょう?
これも立体地図の一種といえるでしょう。
ただ、たいていの場合、
普通の紙地図ほどの情報が表現されていないことが多いですね。
また、ガラスケースの奥などに設置されていて、その場で見ることは
できても、地図のように気軽に持ち歩いたり、自由にルートを
書き込んだりするようなことはできません。
このようなものを私たちは「ジオラマ」や「地形模型」と分類しています。
立体地形模型は模型、立体地図は地図なのです。
ここでの立体地図の定義はある程度軽量で、手で持ち運ぶことのできる程度の大きさで、必要な地図情報をもつ立体造形物としましょう。
その他の立体地図?
この定義に当てはまらない地図などは立体模型と呼ぶことにします。
その他にも立体地図と呼ばれている別の意味合いの立体地図が存在しています。
1つには、擬似的に3次元的な描画方法により地図を表現することにより 肉眼の持つ錯視を利用して立体感を持たせた立体地図と呼ばれるものです。 近年、コンピュータグラフィクスの技法の発達などにより、ある地点からの景観をパースペクティブに(2次元平面に)描画した画像を立体地図などと呼ぶことがあります。
一部のカーナビゲーションシステムや有名なソフトウェアのカシミールなどでも採用されていますが、 立体地図といっても凹凸は存在しません。 ここでは、このような地図をパノラマ地図(擬似3次元地図画像)と呼ぶことにします。
立体地図と呼ばれる地図としては、それ以外にステレオグラフなどの方法による立体視を用いた手法によるものが
あります。 左右の目でわずかに視点のことなる画像を見ることにより、目で見た目には立体感が得られます。
一般的には、このような手法で作成されるのは航空写真を用いた立体写真による
地形情報です。確かに立体的には見えますが、比較的狭いエリアを見ることしかできないため、尾根を挟んだ2点のどちらが高いか、などという場合にははっきりと答えが出しにくいです。また、見る位置が限られる。同時に複数の人が見ることが困難。
地図ではなく航空写真であるため、地図情報が不足している。などの欠点があります。
ここでは、このような立体視を用いたものはステレオ写真と呼ぶことにします。
また、さらに別の意味合いの立体地図あるいは3次元地図と呼ばれる
地図(地図というよりは地図情報と言った方がよいかもしれない)があります。
私たちの住んでいる世界には、山があり海があるでこぼこした世界です。
しかし、私たちは通常、その地表面にはいつくばって生活しているために
3次元的な情報は、日常生活では、あまり意識することがありません。
そのために、一般的な道路地図や鉄道地図などでは高さに関する情報を
ある程度犠牲にして、印刷媒体などで表現しやすいようにしています。
ですから、これらの平面的な地図は通常の道案内などの用途では十分な
機能を果たしますが、都市部などでは地下道、地下鉄、地下街といった
3次元空間を意識せずには表現しきれない場合があります。
また、上下水道、電気、ガスなどの配管などは道路の下を立体的に網のように
配置されています。こういった配線、配管のレイアウト情報に深さなどの
情報を付加しているという意味で3次元地図あるいは立体地図など
と呼ばれることがあります。
このような地図(地図情報)は通常コンピュータの内部で表現されるもので
一般の人たちにはなじみの薄い地図となります。
ここでは、このような地図を3次元地図情報と呼びます。
触地図
最後に立体地図ではあるけれども、ちょっと変わった例をごらんに入れましょう。
慣れた道を通るときには地図がなくても目的地にたどり着くことはできますが、初めて訪れる場所では地図があると便利です。場合によっては地図がなければたどり着けないかもしれません。
それでは、目の不自由な人の場合はどうでしょうか?
実際の世界が見えないだけでなく、地図を見ることもできません。
そこで、役に立つのが触地図です。
触地図の例(地図と測量の科学館)
目の不自由な人が、自由に地図を読めるように、点字で地名や注釈を
表現したり、道路や川や目的地の位置を太い線、細い線、点線、網目模様などの凹凸で表現します。
ですから、立体地図とはいっても実際の地面の起伏通りに立体にするので
はなく指先で触れて地図を読みとれるように、凹凸で情報を表現した地図です。
|